所属グループ「Mirror,Mirror」のステージで愛嬌をふりまく雲丹うに(写真:カネコシュウヘイ)
超名門校出身者ばかりの家系で、一人娘として育った アイドル ・雲丹うに。
自身も 「 東京大学 」 を卒業し、 「 東京大学 大学院」 を修了。現在は、 アイドル グループ「Mirror,Mirror」の一員として、力いっぱいのパフォーマンスを見せる。
教育熱心で厳しい両親のもとで育ち、中学から高校にかけては部活に入らず、 「東大合格」の一心で猛勉強 。1浪を経ての東大進学後、 青春を取り戻すべく、 アイドル のコピーダンスサークルへ入ったのが、彼女の転機 となった。
ただ、その道のりには苦労もあった。
東大院でプロの アイドル としてステージデビューするも、両親には明かせずにやむなく就職。大学院修了後の約4ヵ月は アイドル と銀行員を兼業 し、親元から離れた。
「親はいつになれば、私を認めてくれるのか」 とポツリ。ステージで笑顔を見せる雲丹の歩みをたどると、稀有な人生像が見えてきた。
*この記事の前半: 「東大→東大院」アイドルの”超壮絶すぎる青春”
いわゆる“前世”を持つ アイドル
東大、東大院を修了 。 大手銀行に就職して約4カ月で退職、専業 アイドル となった雲丹うにのキャリアは異色だ。
大学時代に 「友だちを作りたい」として、 アイドル のコピーダンスサークルに入った のが分岐点になった。
直近でも、クイズ番組『ネプリーグ』や、芸能人がテストに挑む『呼び出し先生タナカ』など、地上波の人気テレビ番組に相次いで出演。
ソロタレント“雲丹うに”として、忙しない日々を過ごす。
しかし、彼女のホームはテレビではない。 ライブハウスを中心に活動するグループ「Mirror,Mirror」のステージ だ。
グループの結成は2021年夏で、2022年1月にお披露目。雲丹自身のキャリアとしては2組目で、 アイドル 界隈でのいわゆる“前世”を持つ。
キャリア1組目では、軽い気持ちでプロの アイドル の世界へ飛び込んだ。しかし、現在の「Mirror,Mirror」では“ガチ”でステージに。
ただ、 飛躍の背景にある「東大卒」の肩書きを名乗るのは、当初「嫌だった」 という。
その真意とは、何だったのか。
超名門校を卒業した両親のもとで、一人娘として育った雲丹。
生い立ちの詳細は、本稿の関連記事「「東大→東大院」 アイドル の”超壮絶すぎる青春”」で紹介している。
小学校時代には 中学受験に挑戦 。
進学校へ入学してからは部活にも入らず猛勉強に励み、 誰もが経験するであろう「青春」を味わってこなかった 。
中高一貫校での6年間、1浪時代の1年間。 のべ7年間にわたり、東大合格のためにと一心に勉強 。
東大進学後にようやく、自由を謳歌 できるようになった。
前グループの空中分解を経て「Mirror,Mirror」に
アイドル の世界に飛び込んだのは、東大の2年次だった。
ふと 「団体生活を経験していないのはヤバい」 と思い、 アイドル のコピーダンスサークルに加入した。
運動が苦手なため 「体育会系のサークルはムリだ」 と判断し、代わりに「かわいいモノやかわいい子には興味があるし、かわいいダンスならばできるかも」と考えての決断。
大変さはあったが、中学から高校にかけての部活で 「周りのみんなが味わってきた青春はコレだったんだ」 と感じ、ステージへ立つ喜びを知った。
サークルの当時はAKB48、乃木坂46、Juice=Juiceなど「幅広い方々をコピーして」と回想(撮影:梅谷秀司)
サークルは4年次に卒業。再びの転機は、 東京大学 大学院農学生命科学研究科への進学後 に訪れた。
大学院の1年次にふと周囲から、セルフプロデュースで アイドル グループを立ち上げる話が舞い込み、再び アイドル のステージに。
ほんの軽い気持ちで加入を決心し、メンバーの1人“UNI”として活動。
しかし、グループ内の「ゴタゴタ」により、わずか「8カ月ほど」で、空中分解するかのように「解散」してしまったという。
内心では 「これが最後の アイドル 経験になるのは嫌だ。もう一度、チャンスがあれば」 と願っていた。
そのさなか、大学院の2年次に知人経由で舞い込んできたのが「Mirror,Mirror」立ち上げの話だった。
すぐに「人生初のオーディション」を受けて、合格。2021年夏のグループ結成後は、大学院と並行して歌やダンスのレッスンに励んだ。
2022年1月にあったお披露目のステージでは、ライブ アイドル としての先輩にあたる二丁目の魁カミングアウト、クマリデパートらと共演。
空中分解を遂げたキャリア1組目とは「格が違う」と痛感し、 アイドル に対して“ガチ”になった。
それ以降、ステージからは客席へ熱視線を。
自身のメンバーカラーである“白”のサイリウムを持たないファン、いわゆる“推し”でないファンとも「必ず目を合わせられるように」と意気込む。
キャリア1組目の空中分解を経て、2組目の「Mirror,Mirror」へ。2021年夏のグループ結成後、就職活動をしていたとは驚く。
当時は大学院の2年生で、 卒業後は「 アイドル を本業に」 と願っていた。
それでもなぜ、就職活動を“せざるをえなかった”のか。
たどってみると、その流れと心中はやや複雑だった。
「母はいつ私を認めてくれるのか」とポツリ
東大院修了を半年後に控えた、2021年夏だ。
一人娘の将来を案じたのか、雲丹の実家では 「史上初の 家族 会議」 が開かれ、母が 「あんた、就職どうするの?」 とつぶやいた。
厳しい両親のもとでは、 アイドル としての活動は「内緒」にするしかなかった。 家族 会議の空気は重く、返す言葉もない。
当時は結局、観念して「いったん就職して、行方をくらまそう」と決意したという。
しかしいざ、就職活動をしようにも「秋採用」を狙うしかなく、候補となる企業数は多くない。
そこで 「東大卒、東大院卒の肩書が重宝されそうな有名企業」 にしぼって「3社」だけエントリーした結果、大手銀行の内定を得た。
2022年1月には「Mirror,Mirror」がステージでお披露目されて、3月には東大院を修了。 4〜7月までは、銀行員と アイドル を“兼業” した。
その後、銀行を退職直前に「ギリギリもらったボーナス」も使い、願いどおりの一人暮らしを叶えて、親元を離れた。
銀行退職後に「 アイドル 一本で生活できるほど」の収入を得ているとは驚き(撮影:梅谷秀司)
ただ、地上波のテレビ番組にも出演する現在となっては、両親に アイドル の活動が“バレて”いないのかは気になる。
尋ねると、 父は「応援」している そう。
実は、銀行を退職した当時、雲丹の父は 「もっといい生き方があるはずだ。東大へ行ったんだし」 と難色を示していた。
しかし、たまたまテレビで雲丹の活躍を見た父の同僚が、父をライブに誘ってくれたのをきっかけに、 今では活動を温かく見守ってくれる ようになった。
ただ、 「母は応援してくれているのかな……」 とつぶやく。加えて 「連絡を取っていないし、私の活動を見ているかも知らない」 と吐露。
実家で暮らしていた当時、現在の真っ白な髪色にして 「『ご近所さんに顔見せできない見た目』にするのはやめなさい」 と諭されて以降、 会話をした記憶は「ない」 という。
母は今、何を思っているのか。察するしかできないが、雲丹は 「いつになれば、私を認めてくれるのか」 とポツリ。
それでも、 育ててくれた感謝は心の中にずっとある 。
母も応援してくれていると信じて、現在は、 地上波のテレビ番組でソロタレントとしても活躍するほど、活動は順調 だ。
背景には 「東大卒」「東大院修了」 という、誰もがうらやむ肩書があるのも明らか。
しかし、 雲丹自身はプロの アイドル として、ステージに立ちはじめてからしばらくは、肩書を誇示していなかった 。
「 学歴 は努力の結果」と悟って前面に
東大院の1年次、キャリア1組目のグループに在籍していた当時は、 東大卒の肩書によって「ミーハーな人たちがたくさん来たら、嫌だ」 と思っていた。
「東大のフィルター」はなしで見てもらいたい 。あくまでも勝負するのはパフォーマンスで 「 アイドル にしては、頭の回転が速い」と驚いてもらいたかった という。
しかし、現在では 「グループのためになるなら」 と心境は変化。
「 学歴 は努力の結果」と悟り、前面に出している 。グループの特典会では、地頭のよさから「話せば面白そう」として、足を運んでくれるファンもいると喜ぶ。
活動の拠点は「Mirror,Mirror」のステージ。テレビ出演も「動員に繋げたい」と願う(写真:カネコシュウヘイ)
活動の幅が広がるにつれての苦労も。
ステージではリラックスした表情で愛嬌をふりまくが、テレビ出演では「緊張」も絶えない。
ただ、慣れない環境だけが理由ではない。そこにも、育った家庭環境が影響しているのは、雲丹らしいと思える。
東大合格を目指していた 中学校時代、高校時代は、実家で「ニュース番組と、自然の風景を流す番組しか見られなかった」 と回想。
当時は、学校で友人が 「月9が〜」 と話していても 「何のこと?」 と聞き返すほどで、 バラエティ 番組などは「ほぼ見てこなかった」 という。
ただ唯一、水曜日の夜だけはチャンスが。 親が趣味のヨガへと出かけている間だけは『クイズ!ヘキサゴンII』と『はねるのトびら』を見られた 。
とはいえ、両親の「下品な笑いが好きじゃない」との持論を理由に 「みんなが当たり前に知っているテレビ番組」を見ずに過ごしてきた、青春時代の“ブランク” も。
テレビ出演時には「失礼ながら、共演者の方がわからないときもあって……」と苦笑する。
はたから見れば “超温室育ち” で、青春時代の バラエティ 番組にほとんどふれてこなかった雲丹が、芸能人として知名度を高めつつあるのは数奇だ。
しかし、その純粋さも、彼女ならではの持ち味といえる。
自身で「向いている」と胸を張る アイドル として、ソロタレントとして、その未来はきっと明るい。
*この記事の前半:「東大→東大院」 アイドル の”超壮絶すぎる青春”
(カネコ シュウヘイ : 編集者・ライター)
發佈留言